大貫康雄元NHKヨーロッパ総局長の見解
以下は、2016年5月19日憲政記念館にて開催された「上杉隆君の名誉回復を祝う会」にて登壇された大貫康雄元NHK欧州総局長のスピーチ内容を文字おこししたものです。()内は補足説明。
「自由報道協会の大貫です。アメリカ(特派員)時代にも、ヨーロッパ(特派員)時代にも同じようなことを言われていたので、鮮明に覚えています。
『日本の常識は世界の非常識だ』と(言われていました)。(それは)なぜか?
『日本のメディアは弱い人を叩いて強い人を擁護する。メディアの役割を完全に放棄している』というのです。
一般に、人には色んなしがらみがあり、言えないこともあるでしょう。ジャーナリストの在りようというのは、そうした一般の人たちに代わって、自分がこれは社会に、人々に、知ってもらうべきだと納得したものを言う。 それがジャーナリストとメディアの役目だと思うのです。
もっと率直に言うと、その役割を失ったら、日本社会において、メディアの存在意義はない。
社会に向かって、きちんと言うべきことを言う、ジャーナリストがそれを放棄したら存在価値はない、ということです。
東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故の後、上杉さんがメルトダウンをいち早く言い出したこと、これは素直に言えば、スクープです。日本国内、大スクープです。
先ほど菅元総理がメルトダウンについて挨拶で言っていましたけど、ヨーロッパのメディアは直後にメルトダウンと言いだしたんです。少なくとも上杉さんは、ヨーロッパのメディアのようにきちんと情報収集をして、東電に行き問いただしました。ところが他の多くのメディアの報道は、上杉さんがきちんと取材した、そういうところは完全に掻き消されていました。
上杉さんのような(報道)姿勢はヨーロッパでは当たり前なんです。取材し確認するのにいろんな方法があり、東電に聞かなくても(調べれば)メルトダウンしていることがわかります。メルトダウンをすればどういう放射性物質がどのくらい出るかは、世界の研究機関が調べています。
たとえば、CTBTという包括的核実験禁止条約があります。その条約に関しオーストリア・ウィーンに気象地球力学中央研究所機関は、世界60カ国以上で放射能の検出を常時行っています。
アメリカ軍も北朝鮮の核の汚染をチェックしています。情報はすぐに確認できます。取材は、いくらでもできます。
日本の大手メディアは、そういう肝心なところを(取材)しないで、逆に、当たり前のことを言った人(上杉)などを、デマ野郎、などと叩くわけです。
スクープをした記者が、称賛されるのではなく逆に攻撃される、名誉棄損の極まることです。
こんな国が世界に他にありますか。
その中で、上杉さんたちが立ち上げた自由報道協会は公益社団法人に認可される前でしたが、間接的ながら大変な余波を受けました。それでも、めげずに頑張ってきました。上杉さんは個人的にも実際、相当のお金を自由報道協会のために出しております。
これ程の逆境に耐え抜き、初心を貫くひとは、非常にまれです。私は、この日本では、「絶滅危惧種」だと思っております。日本にはいないかと思っていましたが、ここにいます。日本のメディア界にとって、貴重な存在であると思っております。これからもよろしくお願いします」
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